1/2ページ目 カリカリカリ… 「ふふっふふっ…」 真夜中のリビングから微かに漏れる明かりと不気味な笑い声。 はっきりいって、かなり怪しいシチュエーション。 しかし、その声の持ち主はここの家の持ち主でもあるわけで。 さらにその男がかなりの変人とくれば…。 (放っておくに限る) 零は廊下を軋ませぬよう、そっと踵を返したのだが。 「ボクの可愛い子供たちにお揃いのパーカーを着せてみました!(b^ー°)どぉ?どぉ?可愛くない!?ゆっきーが可愛いのは言うまでもないんだけど、錐生くんのこの照れ具合もまたいい感じだよね。あ、今年もヨロシク――と、これでよし!」 バァンッ!! 「わっわっわ、錐生くんっ!?」 「理事長…」 吸血鬼の優れた聴覚で粗方の状況を掴んだ零は、ドアを開け放つと理事長をギロリと睨んだ。 勝手にヒトの写真を年賀状にするな。 そんなアホ丸出しの年賀状誰に出すんだ。 最後にオマケみたいに宜しくとか有り得ねーだろ。 何が『よしっ!』だ!? どこから突っ込めばいいのやら。 頭の中で言葉を選んでいると、視界に入った大量の年賀状。 そしてその全てに刷られた写真を見て、零は一番の文句を口にした。 「ヒトの写真になんて物合成してんだ!?この変態!!」 お揃いの白いパーカーを着た零と優姫。 「お揃いで買ってきたから記念に写真撮ろ〜!」と言われて渋々写った覚えはある。 優姫が零に抱き着くという構図だったのも確かだ。 しかし、兎の耳を装着した覚えは断じてない。 しかもこの枚数…。 こんな恥ずかしい格好をハンター協会関係者に見られるなんて、どんなことをしても避けたい。 「まさか協会関係者も含めて、全員にこの年賀状を出すのか…?」 「まっさか〜」 落ち着きを取り戻した理事長は手を振って否定した。 その仕草がオバサンじみていると思いつつ、零がホッとしたのもつかの間。 「枢くんにはちゃんと違うの送るよ〜。じゃないとボクも君もただじゃ済まないからねぇ」 (…は?) 「とりあえず優姫のドアップ写真にしておけば間違いないかなー」 つまり… 「玖蘭枢以外にはこの年賀状を送るってことですか…?」 「もっちろん!年賀状ってのはね、子供を見せびらかす機会なんだよ♪夜刈くんもなんやかんや毎年楽しみにしてくれ――」 「今すぐ書き直せぇぇぇ!!!」 ――理事長からのまともな年賀状を見て、夜刈がこっそりがっかりしたのは1月3日のことでした。 →年賀状 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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