小動物の温もり
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「もうっ、せっかく零にも癒やしを分けてあげようと思ったのに!もういい、私1人でネコちゃんと遊ぶから!」



すっかり拗ねてしまった優姫は猫を追いかけようとくるりと零に背を向けた。
その拍子に揺れたセミロングの髪が零の鼻先を掠り、甘い香りを漂わせる。




グイッ



「わっ」



腕を引けば優姫は零の胸の中に収まって。
その感触は小動物を連想させた。
きっとさっきの猫もこんな風に温かくて柔らかかったに違いない。



「な、なに?」



後ろから抱きついているせいで優姫の表情は分からないが、抵抗する気はないらしい。
それをいいことに零はそのまま優姫の両肩を押さえ込んだ。
これでそう簡単には逃げられない。



「猫、いなくなったから…な」

「私がネコの代わり…ってこと!?」

「だな」



本当は猫なんてどうでもいい。
けど、何か理由をつけでもしないとこんなことはできないから。
髪を掻きあげると露わになった白い首。
ソッと触れるようなキスを落とせばビクリと肩が揺れた。



「ぜ、ろっ…!?」

「俺に癒やしを分けてくれるんだろ?」



耳をくすぐるように囁けば黙り込んでしまった優姫。
多分、反応に困っているのだろう。
その証拠に耳が赤くなっている。



「安心しろ、俺は動物虐待者じゃないから」



(もっとタチが悪いけどな…)



第2の言葉は呑み込んだ。
さて、この小動物はどこまで耐えられるだろうか?
なんて意地が悪いことは百も承知。
けれど、知ってしまったらなかなか手放せない。
見事脱出を成し遂げた猫の鳴き声が微かに鼓膜を震わせたのもお構いなしに、その温もりに再び唇を寄せた。



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