以心伝心?
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「普通科はもう門限だ!騒いでないでさっさと寮に帰れ!」



ギロッという効果音がまさにぴったりだと思わせる目つきをした零は、今日も普通科の女子達を固まらせていた。



「怖ーい…」

「錐生って性格悪いよね」

「睨まないでよ!」



そこら中から聞こえてくる不満。
しかし、零がそれに怯んだことは今までも、そしてこれからもないと断言できてしまえるのがすごいところだ。



「…泣かされたいのか?」



そう言って普段枢先輩に向ける三分の一程度の殺気を向けると、みんな一目散に逃げ帰って行った。
蜘蛛の子を散らすとはまさにこのことだ。
枢先輩の誰をも一瞬で魅了してしまう微笑みが枢マジックなら、零のこの睨みは零マジックか。
そんなことを考えていると、零の鋭い視線が今度は私に向けられていた。



「…優姫」

「な、なんで私まで睨むの!?」

「…今、ろくでもないこと考えてただろ」



ギクッ



なんて鋭いんだろう。
零は人の心を読むことが出来るのか。
それとも私がサトレラだったのか。



「古いな…」

「えっサトレラ確定!?」



あぁ、どうしよう!?
サトレラだったなら、今まで私が考えていたバカなことが全てだだ漏れ…。
そんなの…そんなの──
恥ずかしすぎる!
消えたい!
穴を掘って一生モグラのように暮らしたい!



「優姫、そこはアスファルトだ。穴を掘りたかったらグランドにでも行ってこい。それから、素手じゃ絶対にムリだ」



またもや私の心の声を聴かれてしまったのか。



「私の心の声を聞かないでぇぇぇ!」



慌てて零の耳を塞ごうと手を伸ばせば、私の両手は呆気なく零に掴まえられてしまって。



「優姫…」



そのまま引き寄せられたものだから、零の真剣な顔が目の前にあった。



「ぜ…零?///」



私の意思に反して、心臓が勝手にすごい音をたて始める。
こんな至近距離では、心の声はおろか異常な心音まで聴かれてしまうではないか。
手を振り解こうと試みたものの、零の力が意外に強くてかなわなかった。



「優姫…」



今度は耳元で名前を呼ばれた。
その吐息がかかる程の距離に、自然と耳が熱くなる。




「ぜ──///」

「そんなもの、存在するわけないだろ…」

「…………え?」



今、零は──何て…?



「だから、心の声が聞こえるなんてあるわけないって言ってんだよ」



それは…つまり──



「サトレラなんて病気はないってこと…?」

「ああ」

「じゃあ、テレビでやってたのは…?」

「作り話に決まってんだろ、馬鹿」

「なっ…!でも、さっき零が…」

「お前の考えてることくらい、その百面相を見れば分かるんだよ」



またまた私の心をよんだ零。
でもそれは、私の表情から読み取っているらしい。



「…なーんだ」

「『心配して損した』…か?」

「ちょっ、人の心を勝手によまないで!!」

「お前が単純だからだろ」

「そんなことな──」

「ああ、それと」

「…?」

「『サトレラ』じゃなくて『サトラレ』な」



「…『カタカナくらい読めるようになれよ』って思ったでしょ」

「よく分かったな」



ムカッ



「零ーっ!!」


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