夏の終わりの悪夢(零ver)
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リビングの電気は付けっぱなし。
予想通りテレビも。
しかし、テレビの前のソファには人影がない。
不思議に思ってソファの前に回り込んでみると、パジャマ姿の優姫が小さくなって眠っていた。
本当に小さくて、後ろからだとソファの背もたれに隠れて完全に見えなかったのだ。



(ったく、こいつは何視てたんだ…?)



近くにあった新聞でテレビ番組を確認する。
12時くらいには何も聴こえてこなかったから、それ以降の時間のはずだ。
優姫が興味を持ちそうな番組を捜すと、目に止まったのは1時からの都市伝説特集。



(これか…)



優姫は怖がりなくせにこういったものをよく見たがる。
呆れながらも新聞を畳んでテレビを消した。
途端に部屋が静まり返ったが、優姫は一向に起きる気配を見せない。
夏だとは言っても、朝と夜はやはり肌寒くなるものだ。
こんな薄着のまま布団も掛けずに寝ていたら風邪をひいてしまう。
このまま優姫を放っておくわけにはいかないので、部屋まで運んでやろうと腕を伸ばした──が。



「……っ」



突然眉根を寄せる優姫。
心なしか手も、変に力が入ったように握りしめられている。
まるで何かに怯えてるかのように──。
怖い夢でも見ているのか。
それなら起こしてやった方がいいと思い、口を開きかけると──。



「零!」



まるで助けを求めるかのように俺の名前を呼んだ優姫。
一瞬、自分の耳を疑った。



(俺…?)



寝言で優姫が呟くのは、決まって玖蘭枢の名前。
だが、優姫はハッキリと俺の名を口にしたのだ。
そのことに驚きつつも、優姫の顔が未だ苦しげに歪んでいるので、とりあえず優姫を起こしてやる。



「優姫…」



一度名前を呼んでやると、途端に恐怖の色が薄くなった。



「優姫…」

「ん…」

「優姫、風邪ひくぞ」

「んんっ」



ついでに肩も揺すると、大きな瞳がゆっくりと開いて俺を映し出した。



「ったく、休みも明日で終わるんだから──」


"夜更かしも大概にしろ"という言葉は、俺の名前を呼びながらいきなり抱きついてきた優姫によって阻まれた。



「なっゆう──///」



優姫の柔らかさに少し動揺した。
俺らしくもない。



「ありがとう…」



優姫があまりにも必死に抱きついてくるものだから片手を背中に廻し、もう片方の手で頭を撫でてやった。


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