2/6ページ目 「これ…どうしようか……?」 不気味な人形を前に、優姫は困り果てていた。 「さぁな」 一方、この不気味な物をもらった張本人、零はまるで他人事のような態度である。 「『さぁな』って…。元々零のなんだからちゃんと考えてよ!」 「元凶は玖蘭枢だろ。俺は断った」 「うっ…た、確かに…」 零は一度ならず二度も断ったのだ。 しかも敬語で。 つまり、"丁重に"お断りしたのだ。 よく考えてみれば零に非はないし、元凶は枢先輩だという零の主張にも頷ける。 (でも、もらった物を返しに行くなんて失礼だし…) さっきみたいに二人に板挟みされるなんてまっぴらごめんだった。 はっきり言ってあの空気には耐えられない。 (ストレスでハゲるかも…) 優姫が頭を抱えてしゃがみこんでしまったので、零はため息をつくと不気味な人形を持ち上げた。 「えっ!?ちょっと!それどうする気!?」 「捨ててくる」 そう言って歩き出した零。 厄介な物を押しつけられたせいでいつもより不機嫌そうな顔。 そしてその手には、人が入っているのではないかと勘違いされそうな袋。 (なんたって等身大人形ですから) これは── 「ぜ、ぜ、ぜ、零っ!待って!待ってってば!」 「…なんだよ」 「その状況はヤバいから!」 「は?」 「零がそんな顔してそんな物を捨てたらあらぬ誤解を招くって!」 「……何が言いたいんだ」 「だーかーら!『元ヤンの錐生零、遂に殺人!?』って明日、校内新聞の大見出しに──いや、元ヤンじゃなくて現ヤン…?」 「俺…ヤンキーになった覚えないんだけど」 「それに!業者さんだってそんな不気味な物持って行ってくれないよ!」 「…分かった」 そう言って零は反対方向に歩き出した。 「えっ…今度はどこ行く気!?」 「焼却炉。捨てんのがダメなら燃やすしかないだろ」 「いやいやいや!私がさっき止めた前半の理由ちゃんと聞いてた!?燃やすなんて捨てるより怪しいから!それに…──」 「はぁ?まだあんのか?」 「そんなテキトーに処分して零が呪われちゃったら困るし…」 さっきまでの勢いとは一転し、潤んだ瞳を向ける優姫。 これは効果てきめんだ。 零は昔から優姫の泣き顔に弱い。 仕方ないといったように戻ってくる。 「──で、どうするんだ?」 「…………どうしようか」 「……」 堂々巡りだ。 <<重要なお知らせ>>@peps!・Chip!!をご利用頂き、ありがとうございます。
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